東京都安全条例第5条は、長屋について記載しております。長屋を計画するうえで重要なポイントは「主要な出入口」と「避難」です。この2つを理解することで、東京都安全条例の長屋をマスターすることが可能です。
本記事は理解しづらい東京都安全条例第5条の長屋についてわかりやすく解説しております。
長屋とは?
長屋とは一言でいうと「共用部を持たない、集合住宅」のことを指します。つまり、エントランスや共用廊下はなく、道路や敷地内通路(外部)から直接玄関に入ることが出来れば、長屋になります。
長屋にすることで共同住宅よりも規制が緩和され計画を有利に働かせることができます。例えば窓先空地を設ける必要もなく、避難経路の幅 等も緩和されています。
長屋を計画するうえで重要なポイントは東京都安全条例第5条に記載しています。その内容を図解を通してわかりやすく伝えたいと思います。
東京都安全条例第5条1項 主要な出入口
東京都安全条例第5条1項は「主要な出入口」について記載しております。
原則として、長屋の各戸の主要な出入口は道路に面して設ける必要があります。
ただし、道路に直接面していない場合でも、出入口の前に避難経路として有効な通路(敷地内通路)が設けられていれば、道路に面しているとみなされます。
敷地内通路の幅は基本的には「3m以上」が必要です。この通路は、長屋の住戸の出入口から「35メートル以内」に道路に繋がっている必要があります。
ちなみに、35メートルを超えた場合は敷地内通路の幅は4m以上必要になります。
敷地内通路の幅は原則「3m以上」が必要です。
敷地内通路は原則3m以上必要ですが、住戸の合計床面積や住戸数が以下の条件を満たす場合は、通路幅を「2m以上」に緩和することが可能です。この条件とは次の2つです。
1.長屋の住戸の床面積の合計が「300㎡以下」であること。ただし、すべての長屋の住戸の床面積が40㎡を超える場合は、この合計面積の基準が「400㎡以下」となります。
2.長屋の住戸の数が「10戸以下」であること。
この条件を満たすことで、通路を2メートル幅に計画でき、敷地利用の効率を上げることが可能です。
東京都安全条例第5条2項 避難
第5条第2項では、災害時に住民が迅速かつ安全に避難できるよう、建物設計における避難手段の確保を目的としています。
長屋においては、共同住宅のように窓先空地を設ける必要はありませんが、避難経路を確保するために以下の要件が定められています。
1.避難上有効な開口部の設置
各住戸の居室には、避難上有効な開口部を1つ以上設ける必要があります。
窓のサイズは特に定められていませんが、行政の指導により、窓先空地の窓と同等サイズ(W0.75m × H1.2m以上)を求められることもあります。必ず事前に管轄区に確認しましょう。
また、避難上有効な開口部は、単に設ければ良いわけではなく、主要な出入口とは異なる位置に計画しなくてはいけません。そのため、敷地内通路内に「避難上有効な開口部」を設けてはいけません。※下図参照
2.避難上有効な開口部が面する避難通路
避難上有効な開口部は、道路もしくは避難通路に面している必要があります。
道路に面していない場合は、有効幅50cm以上の避難通路を設ける必要があります。
避難通路の幅が50以上確保されていることはもちろん、樋などの突出物がないこと、門扉の解放時にも有効幅員が確保されていることを確認することが重要です。
「長屋」と「共同住宅」の複合用途は可能?
長屋と共同住宅の複合用途は結論可能です。
具体的には、長屋は東京都建築安全条例第5条の規定に従い、共同住宅の部分は「第17条に定められた主要な出入口」の規定および「第19条に定められた窓先空地又は道路に直接面する窓」の規定を満たす必要があります。これにより、両者を同じ建物内で計画することが可能です
長屋と共同住宅はそれぞれ独立した用途として計画することができるため、設計において柔軟な対応が可能です。例えば、窓先空地を3mから2mに変更したい場合は1階の一部を長屋にすることで窓先空地の住戸を減らすなどのテクニックがあります。
私が設計した物件でも、複合用途の建物として計画した経験がありますが、それぞれの用途ごとに条例を遵守する必要があるため、設計は複雑になります。しかし、この手法を活用することで、窓先空地や主要な出入口のサイズを小さくしながらも、建物のボリュームを大きくし、敷地の利用効率を向上させることが可能です。
まとめ
1 主要な出入口(第1項)
- 原則として、長屋の主要な出入口は道路に面して設ける必要がある。
- 道路に面していない場合でも、幅3m以上の敷地内通路が設けられていれば例外が認められる。
- 敷地内通路が35メートル以上の場合は、敷地内通路の幅を4m以上にする必要がある。
- 床面積や住戸数の条件を満たせば、敷地内通路の幅を2mに緩和できる。
2 避難上有効な開口部(第2項)
- 各住戸の居室には、1つ以上の避難上有効な開口部を設ける必要がある。
- 避難上有効な開口部は、主要な出入口とは異なる位置に計画しなければならない。
- 開口部が面する通路は、幅50cm以上が必要であり、通路に障害物がないことが求められる。
3 長屋と共同住宅の複合用途
- 長屋と共同住宅の複合用途は可能で、それぞれの規定を満たすことで計画できる。
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